当院では、訪問診療を行っています。
対象となる方は、身体が不自由で通院できない方となります。
ご自宅で診療していた患者様の中には、肺炎を起こして病院に入院されるという方がいらっしゃいます。
今回は身体の不自由な方やご高齢の方に注意していただきたい誤嚥性肺炎について
お話いたします。
食事でむせやすくなったときに、注意しなければならないことのひとつに誤嚥性肺炎があります。
物を飲み込む働きを嚥下機能、口から食道へ入るべきものが気管に入ってしまうことを
誤嚥と言います。
誤嚥性肺炎は、嚥下機能障害のため唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に
細菌が誤って気管や肺に入ってしまい、そこで炎症を起こす病気です。
高齢者では重症化すると命にかかわることもあるので注意が必要です。
誤嚥性肺炎を防ぐポイント
★口腔ケアを徹底し、口腔内細菌の量を減らす
★摂食・嚥下能力を向上させて誤嚥する量を減らす
誤嚥性肺炎のリスクを減らすため、食事をする際
以下のような点に気を付けてみましょう。
①食事の環境チェック
ウトウトした状態での食事は誤嚥を起こしやすくなります。
しっかり覚醒している時に食事を取りましょう。また、覚醒時には食欲
も増進するので、栄養摂取を考えても良い状態となります。
そのためには、食事の時刻を一定にして、静かで落ち着いた環境を作りましょう。
②食事前の口腔ケア
歯磨きなどの口腔ケアは食後に行うのが習慣になっていらっしゃる方が
ほとんどだと思います。
しかし、口の中が汚れていたり、乾燥しているときは、
食事の前に口腔ケアを行いましょう。
食物と一緒に口腔内細菌を誤嚥するのを防ぐことができます。
うがい等の簡単な方法でも、やっておくほうが良いでしょう。
誤嚥性肺炎の直接的な原因は口腔内の細菌なので、
口腔内を清潔に保つことは 誤嚥性肺炎の発症予防に効果があります。
また、食前に口腔ケアを行うことで覚醒レベルを上げたり、
嚥下反射が出やすくなるということも期待できます。
③食べるときの姿勢
首が後ろに反っている状態ではうまく飲み込めません。座るときは
深く腰掛けた状態で足が床にしっかりとついて、軽い前傾姿勢になるようにします。
自身でお食事ができる場合は、ベッドをできるだけ60度以上に上げます。
介助が必要な場合は、ベッドを30~60度にし、枕で頭を支えます。
枕を使って頭部を前に傾けると咽頭と気管に角度がついて、誤嚥しにくくなります。
高齢者が苦痛を感 じない角度にすることが大切です。

また、食事への集中力を高めることも誤嚥防止につながります。
周りにいる家族・介護者等は、口に食べ物がある間は不用意に声をかけないことや
食事中は返事を求めるような話しかけをしない等の気配りも大切です。
④食べ始めと食べ終わりは、飲み込みやすいものを
誤嚥がいちばん起こりやすいのは、準備運動ができていない「食べ始め」と
疲れが出てくる「食べ終わり」です。
このタイミングでは、適度にトロミをつけた水分、ゼラチンゼリー
など嚥下しやすい食べ物を持ってくるようにしましょう。
⑤食べ物の形状について検討する
飲み込みが悪くなってきたときは、液体に適度なとろみをつける、固形のおかずは
ミンチ状やピューレ状にする、といった形状の工夫も重要になります。
市販の介護食製品を使うと介護者の負担軽減になります。
個々に応じた方法が選択できるように医師や歯科医師、栄養士等に相談しましょう。
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